【ご注意】 以下の部分は「新編 温度計測100のFAQ」の一部抜粋ですが、印刷すると全部で30頁以上となります。
放射温度計
原 理
No1プランクの放射則
物体から放射されるエネルギーは、その物体の温度と波長に依存する。
また、その物体が完全放射体(黒体)の場合に、その物体から放射されるエネルギーM(λ,T)は、プランクの放射則と呼ばれ次式で表される。

ここで、
M(λ,T):物体からの分光放射エネルギー (Wm3)
λ:波長 (m)
T:物体の温度 (K)
C1:放射の第1定数 3.7415×10-16(Wm2)
C2:放射の第2定数 0.014388(m・K)
この式は、測定波長λの分光応答度を持つ放射温度計を用いて物体の温度を測定した場合、測定波長λのセンサに入射する放射エネルギーM(λ,T)と未知の物体温度Tは一義的に決まることを示している。
放射温度計の原理はこの式を利用したもので、事前にこの関係を求めることが必要である。
この波長、温度、放射エネルギーの関係をグラフ化すると図のように表され、以下のような特徴(関係)が理解できる。
・温度が高くなると放射エネルギーのピークが短波長に移動する
・温度が高くなると指数的にエネルギーが増加する
この特徴を利用して放射温度計を設計しているため、放射温度計の分光応答度は測定温度域によって異なり、常温付近の温度域を測定する温度計の分光応答度は10μm程度で、1000℃を超える高温用の温度計は1μm前後を使用している。

No3放射温度計の基本構成
放射温度計は光学系、検出器、演算および信号処理の電気回路、操作部、表示部などからなる。
下図に放射温度計の基本構成の概要を示す。

1)被測定物から放射された放射エネルギーはレンズなどの光学系で集光され、フィルタを介して検出器へ入射する。
2)検出器は放射エネルギーをその大きさに比例した電気信号に変換する。
3)放射エネルギーは被測定物の温度の関数であるので、電気回路では予めこれらの関係を求めて演算処理されるよう設計されている。これによって、その電気信号から被測定物の温度を求めることができる。
4)こうして求められた被測定物の温度は表示部へ表示される。または外部出力によって記録計などに記録される。
金属の各波長における放射率

誤差要因
No8放射率、反射率、透過率
固体の表面は、すべてその温度に応じて定まった放射エネルギー(電磁波)を発散する。また、任意の物体は、表面に到達する放射エネルギーを一部は吸収するが、残りを表面で反射したり、物質内を透過させたりする。
物質の表面に到達する単位入射エネルギーのうち、固有放射率εは0<ε<1の定数で、その物質の放射の吸収率に等しく(キルヒホッフの法則という)、その物体の反射率ρと透過率τとの間には次の関係が成立する。
ε+ρ+τ=1

一般に放射率は、対象物(種類、表面状態)および測定条件(温度、角度、波長)等によって変化することが知られている。
金属の各波長における放射率

【参考文献】
温度計測委員会編 (社)日本電気計測器工業会 新編 温度計の正しい使い方No12 光路中の吸収及び散乱
放射温度計で対象物の温度を測定する場合、対象物からの放射エネルギーが放射温度計に取り込まれる道(光路)を妨害する障害物に、注意する必要がある。
対象物からの発煙、鋼材などの熱処理や食品の加工・調理に伴う水蒸気の発生、装置から飛散するミスト、遠隔測定での大気の成分ガスなどが、放射エネルギーを吸収または散乱させ測定値に影響を及ぼす。
大気中の水蒸気、二酸化炭素は、赤外域に特定の吸収帯をもつが、およそ1μm以下3〜4μm、8〜14μmなどの波長では、吸収がほとんど無く無視できる。これを大気の窓とよんでいる。この波長帯を利用して、対象物の温度を測定する放射温度計もある。一般的には、視界を遮るほどの、水蒸気・発煙が有る場合には、パージ手段を使用する。
下図に測定光路の浮遊物をパージする設備を紹介する。
冷却水はストレーナで水垢を除去する。放射温度計は保護ケース内に入れ、冷却水を流し40℃以下とする。エアードライヤを使用する場合、エアフィルタ・ミストセパレータを取り付け、オイルミスト・湿分を除去し、保護ケース内に清浄な空気を入れる。
外来光遮蔽と光路パージのためサイティングチューブがあり、炉内外との簡易シールにシーリングウィンドウも用意されている。いずれも予備エレメントは用意する必要がある。

校 正
No17黒体炉
黒体炉とは黒体空洞を近似的に実現する装置で放射温度計の校正に用いられる。一般には加熱装置、冷却装置および空洞材料が温度範囲によって異なるため、低温域である−40℃から高温域の3000℃までを一台でカバーすることはできない。そのため、使用する温度域に対応した黒体炉を用意する必要がある。
黒体炉構造の一例を示すと図のように内面を黒くした円筒形の空洞を外側から均一に加熱、または冷却することで空洞壁の温度に対応した放射エネルギーが空洞壁から放射されるようになっている。また、その時の放射エネルギーはプランクの放射則に従う。つまり、空洞壁の温度を測定することによって黒体炉の温度を知りその温度を利用して、放射温度計の校正を行っている。

なお、図の黒体炉の形状は空洞底面が円錐状で、かつ空洞部も奥になるに従い大きくなり、このような空洞形状のものは二重円錐形黒体炉と呼ばれている。その他には、空洞形状が球形のものもあり、球形黒体炉と呼ばれている。
黒体炉の種類としては、使用する温度域によって加熱構造や空洞形状が異なり代表的なものとして下表に示す。
加熱構造から見た黒体炉の一部

応用例 1次元走査形放射温度計の使用例 ?20コークス火残り検知
測定場所
石炭を蒸し焼きにしてできるコークスと、鉄鉱石・石灰からなる焼結鉱を高炉に入れ1200℃で銑鉄を製造する。コークスは還元作用で鉄を取りだす重要な役割をもつ。コークス工程では、石炭は焼いた状態で運ばれる。コークスをベルトコンベアーにのせ、搬送する際に、火種が残っていると火災発生の原因となる。そこで、コンベアー上に走査形放射温度計を設置(室外で、蒸気を発生するため、専用冷却ケース内)し、走査温度の最高温度出力に警報を取り込むことで、コークス内に設定温度よりも高温部があると自動的に消火散水できる仕組みになっている。(鉄に含まれる炭素量が1.7%以上を銑鉄、以下を鋼という。)
走査形放射温度計仕様
測定波長 4μm
測定温度 100〜400℃

熱電対
原 理
No24ゼーベック効果とペルチェ効果
名 称 ゼーベック効果
ドイツの物理学者T.Seebeck が1821年に発見した現象。
ペルチェ効果
フランスの時計師J.Peltier が1834年に発見した現象。
原 理 ゼーベック効果
2種類の異種金属で構成した閉回路で、2つの接続点を異なる温度に保つときに、回路に熱電流が流れる現象をいう。
熱電流が発生することは、熱起電力が発生していることであり、熱電対の基本的な原理である。

熱電対(t1>t2 の場合)
ペルチェ効果
ゼーベック効果の逆現象にあたるもので、2種類の異種金属の接合点に電流を流すとき、電流の方向により熱を発生または吸収する現象である。
熱電回路の場合、高温接点側で熱を吸収し、低温接点では熱の発生がある。
応 用 ゼーベック効果
熱電対がこの応用であり、JISに規格化されたB,R,S,K,E,J,T,N以外にも多数ある。
ペルチェ効果
熱電冷却素子(サーモモジュール)がこの効果を利用したもので、この素子の応用として基準接点補償器を作ることが出来る。
その他 同種金属内に部分的に温度差がある場合、そこを流れる電流により熱の発生または吸収する現象がトムソン効果であるが、影響度はペルチェ効果より少ない。種 類
No26白金パラジウム熱電対
白金パラジウム熱電対は、1990年代中頃に研究が進展し、標準用熱電対として極めて高い性能が期待されている熱電対である。R熱電対を始めとする白金ロジウム系熱電対の性能の劣化が、主として白金ロジウム合金に起因することから、2種類の純金属からなる熱電対が開発されてきた。これらの中で、最も実用性が高く、研究が進展しているものが、白金とパラジウムを組み合わせた熱電対である。
構造としては、一般的な2穴アルミナ絶縁管と保護管の組合せが用いられる。白金パラジウム熱電対の構造上の特徴としては、熱電対素線の熱膨張に対する影響を軽減するための工夫がある。白金とパラジウムの熱膨張係数の違いにより生じる、高温になった時の長さの差による影響を抑えるために、絶縁管の穴径を素線径の3倍程度とする方法(図1)や、応力が生じないようにコイル構造を先端につける方法(図2)が採られている。
1000℃以上の高温における起電力のドリフトは、R熱電対に比べて小さく、安定性に優れている。温度−熱起電力の基準関数としては、1500℃までの範囲の関数式が公表されている。(参考文献)
白金パラジウム熱電対の用途としては、主に標準用に使われている。熱電対標準のトレーサビリティの中では、961.78℃(銀点)と1084.62℃(銅点)の標準器として位置づけられている。


【参考文献】
Burns, G. W., Ripple, D. C., and Battuello, M., Metrologia 35, 761-780 (1998).構 造
No30補償導線(エクステンション形とコンペンセーション形)の特色比較
補償導線は、導線を構成している心線の材質により、エクステンション形(熱電対と同じ材質の組み合わせ)とコンペンセーション形(熱電対と異なる材質の組み合わせ)に分類される。熱起電力特性上それぞれに相違があり使用する場合、表1のような得失を把握しておくことが大切である。
表1 エクステンション形とコンペンセーション形の特色比較
分 類 |
特 長 |
欠 点 |
エクステンション (Extension) |
|
1.価格が高い。 |
コンペンセーション (Compensation) |
|
(図1及び図2に補償導線の温度―誤差特性例を示す)
|
図1RCA、RCB補償導線の温度―誤差特性の例

- RCA、RCB:R熱電対用コンペンセーション形補償導線の種類を表わす記号
図2 KX、KCB及びKCC補償導線の温度―誤差特性の例

*KX:K熱電対用エクステンション形補償導線の種類を表わす記号
*KCB、KCC:K熱電対用コンペンセーション形補償導線の種類を表わす記号
【参考文献】
・温度計測部会編 新編温度計測 (社)計測自動制御学会
・JIS C 1610熱電対用補償導線誤差要因
No36 選択酸化
発生現象
K熱電対(+脚)の急激な酸化による熱起電力の減少。短時間に数100℃の低下。素線表面が金属光沢を帯びるか、緑色の脆い酸化物(Green Rotとも呼ぶ)が生成される。また、選択酸化を受けた部分は脆くなっているため、曲げるとひび割れを生ずる。非磁性である素線が磁性を持つ。
使用温度
800〜1050℃の範囲で発生しやすい。
使用雰囲気
還元性雰囲気(特にH2)、または保護管内の酸素分圧の低下状態。
使用時間
短時間(10数時間)にて熱起電力の減少
原 因
還元性雰囲気のある条件下で使用されると、K熱電対(+脚)表面の酸化皮膜は一旦還元されて金属光沢を有する合金表面が露出されてしまうが、次の段階で雰囲気中に微量存在するO2と反応してNiCr2O4が生成されてこれが急激に成長し内部に進行していく。この進行速度は非常に急速であり、このため熱起電力も急激に低下し短時間で使用に耐えなくなってしまう。
対 策
1)還元性雰囲気に強い熱電対を使用する。(?27参照)
2)TiやTaの様に、高温でO2を吸収し易い金属線(ゲッター)を保護管の内部に入れて、保護管内部の酸素分圧をNi-Crの選択酸化の発生レベル以下に保持する。
この場合は酸化保護皮膜(Cr2O3)がついていない線の使用が望ましい。シース形にて対応可。
3)保護管内に常に清浄な空気を供給し、酸素分圧が低下しないようにする。保護管にパージ管を追加する。(?32参照)
4)あらかじめ金属保護管の内面に酸化皮膜を形成する。
用語の解説
酸化保護皮膜
K熱電対(+脚)の表面にクロムの酸化皮膜(Cr2O3)を作り、この皮膜により、酸化の進行を抑止する。
パージ管
保護管等の内部に2重管または細管等を設置し、この管を通じて空気または不活性ガス等を保護管の先端部に送り込み、素線を外気雰囲気から保護する。
酸素分圧
混合気体(空気)中の酸素の占める重量(分子量)の割合。
還元性雰囲気
酸化された物質を元に戻す反応を引き起こす雰囲気。通常は水素(H2)や一酸化炭素(CO)が多い雰囲気である。No38不均質誤差の影響
熱電対の熱起電力は、素線が均質であれば両接点の温度で一義的に決まり、素線途中の温度分布には影響されない(均質回路の法則)。
しかし素線に不均質が生じた場合、そこに温度勾配がかかると局部的に熱起電力が発生する。これを寄生熱起電力(Spurious E.M.F.)といい、測定誤差となる。この誤差を不均質誤差ともいう。熱電対素線が新しく、良く管理されていれば均質であると言えるが、繰り返し曲げたり、伸ばしたりすると素線上に加工歪が加えられ、熱電気的な均質性が失われる。また高温で長時間使用すると素線は劣化し熱起電力が変化する。例えば工業用の加熱設備に取り付けられた熱電対は全長にわたり一様に劣化が進行することはまれで、途中の局部的に高温におかれた箇所の劣化が大きい。このように熱電対の劣化が進んだ部分に温度勾配がかかると寄生熱起電力が発生し、全体の熱起電力に影響を及ぼし、結果的に測温誤差となる。寄生熱起電力による誤差は、不均質度と温度勾配の大きさにより決まり、定量的に評価することは極めて困難である。
熱電対の用法から見れば、使用中の熱電対の挿入長の変更、特に挿入長を短くすることは、不均質部分を温度勾配域に移動することになるので、大きな誤差を生ずることがある。使用中に不均質となった熱電対を校正する場合、プロセス現場で使用している実炉の温度勾配と熱電対の挿入深さと、校正設備としての校正炉の温度勾配と挿入深さは無関係に設定されていることがほとんどであると思われる。このような状態では、現場での測定誤差と校正室での校正結果が一致しないことが十分有り得る。実際使用している状態での誤差が必ずしも校正炉で求められないので、両者を一致させたいときは以下のどれかの方法を用いる必要がある。
1)校正炉の温度分布(炉内、炉外共)と挿入深さを実炉と同じにする。
2)実炉の温度が安定しているときに、他の均質な熱電対を同時に挿入するか、入れ換えて比較測定する。
3)不均質度の測定から推測する。(まだ定量的に測定誤差を精度良く求めることは実験的に立証されていない。)使用例
No45 半導体拡散炉の温度計測
半導体の製造において、半導体シリコンウエハに、酸化、拡散、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの薄膜形成のために各種の熱処理装置が用いられ、半導体製造工程における重要な役割を果たしている。
その一つとして、一度に多数枚のシリコンウエハの熱処理が可能なバッチ式の縦型拡散炉がある(図)。この縦型拡散炉は多数枚のウエハを高さ方向に所定間隔で配列して処理容器内に収容し、この処理容器の周囲に設けた管状ヒータにより加熱して所定の熱処理を施すようになっている。この管状ヒータは炉内の温度分布を均一にするため、高さ方向に複数のゾーン(3〜5箇所)に分けて温度制御が可能になっている。
ウエハへの均一な薄膜の形成には温度管理が重要であり、各ヒータのゾーン毎での温度のバラツキや製造バッチ毎の温度のバラツキを防止すること、すなわち温度制御の良否が製品の歩留まりに大きく関係する。
縦型拡散炉では、制御用熱電対はヒータ近傍(スパイク熱電対と称される)と処理容器内のウエハ近傍(プロファイル熱電対と称される)に設置されている。この2種類の熱電対を使用して、むだ時間を抑制するためカスケード制御が採用されている。
プロファイル熱電対(主としてR熱電対)は、処理容器内を高さ方向に立ち上がった直管状、例えば石英ガラス製の保護管内にヒータの各ゾーンに対応する位置に熱電対の測温接点を配置した構成がとられ、処理容器内の高さ方向の温度分布を検出するようになっている。
【参考文献】
半導体製造の各工程に使用される温調計 計測技術 2003.12測温抵抗体
構 造
No55薄膜白金抵抗素子
白金測温抵抗体の抵抗素子(感温部)は、長らく抵抗素線として細い白金線を用いて、マイカやガラス丸棒を巻枠として素線をそれらに巻いた素子やコイル状に巻いた素線をセラミックに封入した素子が主流であった。それらの巻線素子と異なり、セラミックなどの絶縁基板の上に白金の薄膜を形成し、抵抗素子に加工したものが白金薄膜素子(写真1,写真2参照)である。
一般的には、以下のような工程で製造される。
1)白金ターゲットからスパッタリングにより絶縁基板の上に薄膜を形成する。
2)レーザトリミングあるいはフォトリソグラフィーにより、抵抗回路を形成する。
3)最終的な抵抗調整をレーザトリミングで行う。
4)薄膜の上に適当な絶縁被膜をコーティングする。
5)リード線を取り付ける。
白金薄膜素子は量産効果が出やすく巻線素子よりコスト的にはかなり有利であるが、後述するように、ほとんどの市販品で性能的には巻線タイプと厳密には同等でない。
最近では小型化が進み、幅1〜2mm、長さ2〜5mmの素子が主流になっている。基板の厚さは0.5mm程度であるが、リード線を取り出す部分のみ補強のためにふくらんでおりこの部分の高さは1.5mm程度となる。また、プリント基板などへの表面実装に対応したチップ(リードレス)形状の素子もある。薄膜素子と巻線素子との主要な項目の比較を示す。
表 .薄膜素子と巻線素子との比較
*150℃、1000時間の耐熱試験による。
項 目 薄膜素子 巻線素子
公称抵抗値(0℃抵抗値) 標準品に100Ω、500Ω、1000Ω特注品として数kΩも可能 特殊なものを除いて100Ω
使用温度範囲 −50℃〜400℃程度が主流使用温度範囲を限定したものもある −200℃〜650 (500) ℃
安定性(*) 0.1℃レベル 0.01℃レベル
自己加熱 大きい(2mA測定電流には適さず) 素子サイズに依存するが薄膜素子よりは小さい
価格 安い 高い
【解説】
薄膜素子で巻線素子と同等の温度特性を出すには技術的な問題点も多く、現在でも温度係数がJIS規格よりかなり低い製品がある。また、JIS 規格の温度特性を持つとして販売されている薄膜素子でも厳密な抵抗−温度特性(0〜400℃範囲)を調べると、200℃を超えるあたりから抵抗値が規格の規準値より小さくなる傾向があり巻線素子とは異なる、しかし、その隔たりは小さいので規格の許容差を満足する範囲内に収まっている。−50℃以下でも同様の規準値からの隔たりが多くの素子に見られ、その大きさが許容差の範囲を超えることから、規格品としての下限使用温度は巻線素子と比較し、限定されていた。最近になって、−200℃〜400℃の範囲にわたり、巻線素子とほぼ同等の抵抗−温度特性を持つとされる素子が現れるようになった。

写真1.各種薄膜白金抵抗素子

写真2.薄膜白金抵抗素子の拡大写真
Moiseeva, N. P.:Investigation of W(T 90) Functions for Low-α PRTs in the Sub-Ranges above 0 ℃、Temperature Its Measurement and Control in Science and Industry, Vol. 7、333-338、 (2003)
誤差要因
No57自己加熱による誤差
抵抗温度計は測温抵抗体の抵抗素子に電流を流して温度を測定するため、ジュール熱により測温抵抗体自身が加熱され抵抗素子の温度が測定対象物よりも少し高くなることを自己加熱という。自己加熱は一義的には測定電流の二乗に比例するが測温抵抗体の構造によって決まり、周囲条件により変化する。
1997年改正のJIS C 1604では測定電流を規定電流として0.5mA、1mA、2mA を規定した。測温抵抗体の製品はいずれかの規定電流に合わせて、精度保証を行っているので一般的には測温抵抗体、受信計で規定された電流以下で使用することが必要であり、その結果自己加熱の影響を無視することが出来る。自己加熱の影響を避ける最良の方法は発熱のない状態(電流=0の状態)における抵抗(R0)を求めることである。発熱による抵抗の増加は周囲との熱的な定常状態のもとではI2に比例し、次の式で表すことが出来る。
RI=R0+a・I2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ここでa:温度、温度計によってきまる定数(1)式より二つの異なる電流I1、I2における抵抗R1、R2 を測定することにより次の(2)式よりR0 を求めることが出来る。
R0=(I22R1−I12R2)/(I22−I12)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
しかし、測定電流0 の抵抗値を求めるのは厳密な意味での成立は困難で温度変化の抑制などの意味深い測定、評価が必要である。
実用上は規定電流における抵抗値で評価しており、この値は自己加熱を含んだものである。自己加熱が大きいと測定電流が少し変化しても測定精度に影響を及ぼすので測定電流を所定の規定電流値通りにすることが大切である。
なお、上記以外の規定電流値での校正試験も対応可能である。応用例
No62食品・医薬品むけサニタリ仕様
- サニタリ設計とは
食品、医薬品製造における衛生管理を考慮した設計法で、製造設備は異物や微生物的清浄状態を維持できるようにすることである。
医薬品の場合には、薬事法において明文化され、GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理および品質管理規則)第2章製造管理に衛生管理が定められている。食品の場合には、食品衛生法において製造、殺菌、保存などの諸条件が基準化され、さらに宇宙食用に開発されたHACCP(ハサップまたはハーシップ:危害分析・重要管理点)システムが科学的な衛生・品質管理方式として国際的に注目されている。
- 関連規格・基準
設備・機器のサニタリ設計の規格・基準としては牛乳加工規格として発展した米国3-A規格とJIS B 9650関係規格があるが、通常3-A規格が準用される。3-A規格には衛生基準と実施要綱があり、配管・弁・継手類から乳業関連機器類に至る材質、構造を規定している。JIS B 9650関係規格は食料品加工機械等の衛生に関する設計基準通則で、食料品の接触部、非接触部の衛生対策、材質など衛生対策全般にわたる通則的事項を規定している。 配管・継手類に関してはJIS G 3447およびISO規格が採用される。ISO規格は以前はIDF規格と呼ばれており、1976年にIDFからISOに移管された国際規格である。サニタリ配管に関してはJIS G 3447に、寸法、表面仕上げ、材質、製造方法に関してはISOに規定されている。
・設計要件
基本的なサニタリー設計の要件は次の通りである。
1)微生物的増殖性の最少化
2)容易な洗浄性
3)設備・機器の迅速、容易な着脱性
4)製品の安全性に影響を与えない材質
5)接液面の表面仕上げ
・材質
1)接液部:有毒もしくは有害な物質が含まれたり、またはそれらが付着して人体の健康を損なう恐れがなく、製品原料を吸収しない材料。
2)非接液部:清掃または洗浄しやすいものを選定。
実際に使用されるのは3-A規格に準じたステンレス鋼(SUS 304、SUS 316等)または同等以上の耐食性を有する材料である。溶接部にはSUS 304LまたはSUS 316L等の低炭素ステンレス鋼が使用される。
- 表面仕上げ
保護管
種 類
No65金属材料
工業用温度計測、特にプロセスオートメーションの分野においては、測定対象となる流体には様々な物性のものがあり、温度領域も低温は−160℃から高温では1300℃を超える分野がある。特に化学プラント等で測定対象物が腐食性の流体である場合、熱電対や測温抵抗体を裸のままでは使用できず、測定対象の流体に適した保護管を選定して使用する必要がある。温度との組み合わせで対象流体に対する、様々な耐腐食材料があるが、温度センサの保護管として適切なものを選ばねばならない。
以下に一般的に使用される保護管とシース用の金属材料の種類と特徴を掲げる。

構 造
No66非金属材料
温度センサ用の金属保護管の種類を前項(No65)で紹介している。しかし、使用条件によっては腐食の問題や温度、雰囲気の点から金属材料を使用できない場合がある。特にあまり温度の高くない、酸やアルカリに対しては、フッ素樹脂が極めて強い耐性を示し、用途によっては塩化ビニル等も使用される。
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No67 くり抜き形(サーモウエル)とパイプ封じ形保護管
温度計を保護する構造物の一般的な呼称は日本において「保護管」となっているが、その取り付け方や構造により色々な定義や呼び方が存在する。JISにおいては温度検出素子を保護するもので、温度センサと一体を成している場合を「保護管」と呼んでいる。英国ではパイプライン等に温度計を差し込む穴という意味から「Pocket」と呼ばれることもあるが、一般的には同様の意味から英語圏においては「Well」または「Thermowell」と呼ばれている。この場合は、温度計の付属しない保護管単独の構造物を示しているといえる。
さらに、金属棒材を機械加工して作られるものを日本語では「くり抜き形」と呼んでいるが、英語圏では「Solid Drilled」、「Solidbar Stock」と呼ばれ、Thermowellの一般用語に対し、くり抜きの構造を指し示す別の用語として「Solid Drilled Thermowell」の様に使用されている。また、一般的に配管用に規格化されているパイプの先端を溶接で封じたものを「保護管」(Protecting Tube)と呼ぶことがあるが、英語圏では「Fabricated Thermowell」と明確な使い分けをしている。日本語の場合も「くり抜き形」に対し、「組み立て形」または「パイプ封じ形」の様な表現をするべきであろう。
主に耐圧強度や機械的強度を要求される場合にくり抜き形が使用され、特に、石油化学、ガスや原子力・火力発電所等、長期にわたって高度の信頼性を要求されるプラントでは、ほとんどがくり抜き形となる。焼却炉や熱処理炉、食品プラント等の低圧プラントや、機械的強度を必要としない場合は、パイプ封じ形保護管が多く使用される。
くり抜き形保護管の代表的な形状は図-1に示すが、その形状は接続形式や測定目的により様々なものがある。図示した形式はテーパ保護管であるが、ストレートタイプもあり、用途により使い分けられている。パイプ封じ形保護管の代表的形式を図-2に示す。

受信計
原 理
No77リニアライズ
リニアライズ回路とは、センサからの入力信号に対して受信計が行う補正回路のことを言い、非直線的な入力信号を直線化する(変換)回路である。
通常、温度を記録・制御等の目的で計測するには、その温度を電気信号に変換する必要がある。一般的によく使われる温度計は、熱電対や測温抵抗体で、熱電対は測定対象の温度を直接電気信号(mVオーダー)で出力し、測温抵抗体は感温部の抵抗素子に微弱な電流を流して抵抗値(Ω)を測定する。
しかし、この時得られる電気信号は、温度に直線的に比例してはいない。熱電対でいえば1℃あたりの出力信号(熱起電力)は、測定温度が100℃と200℃の時では異なっていると言うことである。測温抵抗体の抵抗値も同様で、1℃あたりの抵抗値変化は温度によって異なる(JIS C 1602,1604 に規準熱起電力表、規準抵抗値表がある。)
このままの出力信号を用いると制御や記録時の目盛が不均等になる。目盛を均等とするために受信計でリニアライズという補正を行う。
アナログ計器とディジタル計器ではリニアライズの方法が異なる。
・アナログ計器 多段に構成された入力部の各増幅アンプの動作範囲を制御して、入力信号を熱起電力表や抵抗値表に合う様に折り曲げてしまう。増幅アンプ即ち折れ点の数によって補正の正確さが決められる。
・ディジタル計器 熱起電力表や抵抗値表を大まかに抜粋したテーブルをプログラムの中にもっていて、測定した熱起電力又は抵抗値をこのテーブルと比較参照し、入力信号に対応する温度を求める。又は補間式(JIS C 1602,1604)もしくは逆演算の式により計算で温度を求める。補正はアナログ計器に比べ極めて正確に行うことができる。

補間式

E:規準熱起電力(μV)
t:温度(℃)
ai:係数
n:10前後(熱電対の種類・温度範囲により異なる)
折れ線近似法(アナログ計器)
No79補償式基準接点とは
概 要
熱電対の基準接点の一方式であり、その基準接点の温度をなんらかの手段で測定し、この温度における当該熱電対の熱起電力の値を、測定した熱電対の熱起電力の値に加算することによって基準接点補償を行うようにしたものである。
他の方式との比較
補償式基準接点に対する他の方式として、氷点式基準接点、電子冷却式基準接点、室温式基準接点がある。氷点式基準接点と電子冷却式基準接点は、基準接点を0℃に保って測定するものであり、比較的高精度の測定が可能だが、保守性・経済性・設置スペースなどに難点がある。一方、室温式基準接点では補正の手間がかかるうえ、一般には高精度の測定は期待できない。補償式基準接点は、手間と精度の両面からみて最も実用的な方式である。
基準接点の温度測定方法
測温抵抗体、サーミスタ、あるいは半導体温度センサなどによって測定される。
補償方法と精度
熱起電力の加算は回路的に行われる場合もあるが、最近のマイクロプロセッサ搭載形計器ではソフトウェア処理にて行われる事が一般的である。補償式基準接点の場合の補償の精度(基準接点補償精度)は周囲温度0〜40℃において、通常±0.5〜1℃程度である。
注意事項
補償式基準接点の端子接続部については、他の熱源からの放射、伝導、対流などによる影響を受けずに極力均一の熱平衡状態にしておく必要がある。
なお、補償式基準接点の+、−間を短絡すると、測定温度としては基準接点の温度が得られることになる。(下記の説明図の(4)項の式におけるEIN=0に相当)
<補償式基準接点の構成と補償手順の説明図>
1)熱電対の熱起電力EINを測定する。
2)基準接点の温度TRJを測定する。
3)温度TRJにおける熱電対(測定に用いているものと同じタイプ)の熱起電力ERJを求める。(JISの規準熱起電力表相当を使用)
4)E=EIN+ERJ を算出する。
5)熱起電力Eに対応する温度Tを求める。
(JISの規準熱起電力表相当を使用)
これが測定温度となる。
トラブル事例
No90受信計を室温近くの温度で校正する場合の注意
受信計の熱電対レンジを室温に近い温度で校正しようとすると、熱電対から得られる値が小さく他の不確かさに埋もれて正しく評価するのが難しい。
図1はこのことを図式化したもので室温に近い校正温度T1では、他の不確かさ(この場合は補償式基準接点)に埋もれていることが解る。
校正温度T2では、補償式基準接点の不確かさよりも十分に大きい値で校正しているため、この校正の不確かさ評価することができる。

補償式基準接点の不確かさは、測温する温度に無関係であるため図のようになる。この不確かさは通常±0.5〜1.0℃の範囲にある。(?79補償式基準接点の項を参照)また、測温して得られる温度の不確かさの表示には二通りの方法がある。
一方は、測温レンジのフルスケールに対する不確かさを百分率で示す方法で、得られた不確かさの大きさは、どの測温でも一定の値となる。
他方は、読み取った数値または記録された数値に対して一定の不確かさを乗じて示す方法で、近年のデジタル技術を多用した受信計では一般的に成りつつある。
特に、読み取った数値に不確かさを乗じる方法では、室温に近い温度で校正するほど不確かさが小さく、上記のように補償式基準接点の不確かさに埋もれてしまうことになる。全般
誤差要因
No97 温度センサの挿入不足による誤差
熱電対や測温抵抗体の接触式温度センサを設置するときの注意事項に、「位置」と「深さ」がある。測定したい位置に、温度センサの測温部がくるように設置しなければならないが、この時にセンサの挿入長さが不足している場合にはセンサからの伝熱などにより誤差が生じる。また、保護管を使用する場合には、強度計算の結果により長さを決定すると、短くなりすぎて挿入長さ不足による誤差を生ずることもあり、注意が必要である。
流れのない炉内温度を正確に測定するためのセンサ挿入長は、金属保護間の場合は管径の15〜20倍、非金属保護管の場合は10〜20倍と言われている。流れがある場合にも十分な挿入深さを確保したほうが良いが、センサや保護管の共振にも注意しなければならない。下図は温度386℃のガスが流れている管に熱電対を設置したとき生じる誤差について示した一例である。
(a)は挿入深度が浅く、また保温のない外気露出部分が長いので、45℃も低い測定値となる。(b)は理想に近い取付けの例で、挿入深度が十分あり、かつ外気露出部分が短い。(c)は挿入深度がわずかに浅い例で、-2℃の誤差となっている。(d)は挿入深度が不足しており、外気への露出長さが長いため、-15℃の誤差となっている。これらの誤差は熱電対素線及び保護管の熱伝導によるものである。そのほか、温度センサの差し込み長さを確保するために管に対して斜めに設置したり、設置部の管径を局部的に太くしたりすることも有効である。
JIS C 1604 測温抵抗体では参考で示された試験装置に測温抵抗体を500mm挿入したのち、抵抗素子の抵抗を測定しながら挿入長さを徐々に減少させていき、0.1℃変化したときの長さを規定挿入深さとしている。

図-1 熱電対の取付け方法による誤差
【参考文献】
工業計測技術大系1「温度」、日刊工業新聞社発行、工業計測技術大系編集委員会編応用例
No102工業用温度計の選択基準は
温度を測定し、温度の正しい情報を得るには、各種の温度センサ、計測器の中から測定目的、測定対象の条件、測定精度などを総合的に検討し適切に組み合わせることが重要である。以下に温度計を選ぶ際の基本的な項目について述べる。
- 温度センサの選定
温度センサは温度測定に際し、その入力源として非常に重要である。従って、測定しようとする対象の状態、測定の目的などを十分に検討し、その結果を保護管、補償導線などを含めた温度センサの特徴と適合させる必要がある。検討の結果、不具合が生じた場合、取り付け方法など何らかの工夫を施す。表1にこれらを検討する際に留意すべき基本的事項について示す。
表1 温度センサの選定における基本的検討事項
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- 受信器の選定
温度の計測・制御においては、その目的及び条件に適する温度センサが選定されているが、得られた情報をどのように活用するかによって、組み合わせる受信器を選定する必要がある。表2に、受信器を選定するにあたっての基本的検討事項について示す。
表2 受信器選定上の基本的検討事項
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【参考文献】
・JEMIS 034-2001 熱電対及び測温抵抗体による温度測定方法 (社)日本電気計測器工業会その他
No106 形式検査と受渡検査の違い
製品としての特性には、温度特性、電気的特性、機械的特性がある。JISではこれらの項目と試験方法を規定しているが、製品全数にすべての項目について試験を実施し、性能を保証するには物理的にも経済的にも多くの困難を伴う。このため、一つの形式についてロット毎または試作品等であらかじめ試験を行い、意図された性能、仕様が達成されているかを確認する必要がある。これを形式検査という。
一方、受渡検査は、出荷の際に個々の製品について実施し、良否を確認するための試験である。立合試験では、特に要望がない限りはこの受渡検査項目について実施される。
JISで規定されている形式検査と受渡検査項目を以下に示す。
形式検査と受渡検査
○:形式検査 ●:受渡検査

標準
定義・しくみ
No107 国際温度目盛とは
1)熱力学温度と国際温度目盛
熱力学温度の直接測定は、一次温度計と呼ばれる温度計のいずれかを用いて測定することによってのみ可能である。それらは、温度に依存する未知の定数を導入することなく、明示的にその状態式が記述できる温度計である。そのような温度計によって、熱力学温度を求めることは、困難で時間のかかる作業が必要である。一方、一次温度計のいずれよりも、一桁優れた再現性を示す、例えば、白金抵抗温度計のような温度計がある。これらは二次温度計と呼ばれ、これらの二次温度計の利点を最大限に活用するために作られた仕組みが国際温度目盛である。
国際温度目盛は、ケルビンの定義に基づいて熱力学温度を測定したデータに一致するように作られた温度目盛であり、数種類の安定な二次温度計の特性を利用して定義されている。
2)国際温度目盛の変遷
1927年に最初の国際温度目盛が定められ、その後、1948年、1960年、1968年、1975年、1990年と改訂が重ねられた。現在は、1990年国際温度目盛(ITS-90)と暫定低温目盛(PLTS-2000、No.120参照)が使われている。
1990年から用いられているITS-90は、それまで使われていた1968年国際実用温度目盛(IPTS-68)及び1976年暫定温度目盛(EPT-76)と比較して、次のような利点をもつ。
・0.65Kまでの低い温度域に拡張された。
・対応する熱力学温度とより良く一致する。
・全温度領域でさらに改善された滑らかさと精密さ及び再現性をもつ。
・いくつかの小領域を含み、ITS-90の使用を容易にする等価な定義を与える。
・補間計器としての白金抵抗温度計の上限が630 ℃から962 ℃へ拡張された。
・白金-10%ロジウム/白金熱電対が補間計器でなくなった。これにより、630 ℃に存在していたIPTS-68の勾配の不連続性が取り除かれた。
・プランクの放射則に基づく温度領域は、銀点(962 ℃)から始まり、参照点として、銀点、金点、銅点のうち一つを選ぶことになった。
【参考文献】
1990年国際温度目盛(ITS-90)、計量研究所報告Vol.40,No.4,308-317(1991)No110 温度の単位
国際単位系(SI)の中で、基本量の一つである熱力学温度の単位は、ケルビンである。すなわち、量「熱力学温度」の「単位の名称」はケルビンであり、「単位記号」はKを用いる。この単位の定義は1967年の第13回国際度量衡総会で次のように決議されたものである。
「熱力学温度の単位、ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1/273.16倍である」
また、単位ケルビンとその記号Kを温度間隔ないし温度差を表現するにも用いることとした。
SIの中では、熱力学温度の他に、次の式で表されるセルシウス温度も用いられる。セルシウス温度(記号t )の単位の名称は、セルシウス度であり、単位記号は℃である。
t/℃ = T/K - 273.15
1990年国際温度目盛では、国際ケルビン温度(記号T90)と国際セルシウス温度(記号t90)を定義している。T90の単位はケルビンであり、t90の単位はセルシウス度である。T90とt90の関係は、Tとtの関係と同じである。
t90/℃ = T90/K - 273.15
参 考
SI以外では、ファーレンハイト度、ランキン度が使われることもある。これらとT、またはtとの間にはそれぞれ次の関係がある。
(1)ファーレンハイト度fとtとの関係式
f/°F =(9/5)t/℃+ 32
(2)ランキン度rとTとの関係式
r/°R =(9/5)T/ K方 法
No115 水の三重点
意 味
水の三重点は、温度の単位“ケルビン”を決める基本定点であり、国際温度目盛の定義定点の一つでもある。純粋な水の、固体(氷)と液体(水)と気体(水蒸気)の3相を共存させた状態の熱力学温度を273.16Kと定義している。(図1)
構 造
市販されている水の三重点セルは、図2、3に示すように、清浄なガラス製の円筒形容器の中に、真空状態で高純度の水だけを封入し、セルの中心部に温度計を挿入できる構造になっている。
三重点状態の作り方
一般にセルを氷水の入った透明な容器に入れて十分冷却した状態で、温度計用の穴に細かく砕いたドライアイスなどの寒剤を底に徐々に入れ、水を内部から凍らせて穴の周りに氷のさやを作る。氷のさやを下から上に徐々に形成して温度計用の穴の周り全体を凍らせる。昔からの簡便な保存方法として、セルとセルの周りに十分にかき氷を入れた魔法瓶を使う方法があるが、現在は水の三重点近辺の温度を長期間維持する保持槽を使用している。温度が十分に安定した後に温度計用の穴から石英棒などを使いわずかに熱を加えることで、氷のさやの内側を少し融かして、穴の周りに水と氷の境界面を作る。

その他
No124温度計及び温度測定方法の関連JIS
温度計に関わるJISは大変多く存在しているが、ここでは(社)日本電気計測器工業会で直接改正原案作成に携わったここ10年以内のものと最も関連の深いものを記載することとする。

注:備考欄の「原案作成」は直接携わったもの、「関連規格」は最も関連の深いものを示す。
本書では、2005年2月現在の情報によるものを記載しているが、最新情報は「日本工業標準調査会(略称:JISC)」のホームページhttp://www.jisc.go.jp/index.htmlの「JIS検索」のコーナーより、各JISの改正年月日などの情報やJIS規格書を電子的に閲覧することも可能なため、それらによる情報入手を勧める。